この世界の片隅にの中の「傘問答」の一夜に込められた伏線

アニメ映画「この世界の片隅に」は私が大好きな映画です。
戦前、戦中の呉市と広島市の人々の暮らしが事細かに再現された大ヒット、ロングランの作品です。
この映画では物語の重要な事柄をほのめかすために、些細な形で表す様々な伏線が盛り込まれていて、想像力を掻き立てます。
その伏線の一つに、北条家に嫁入りに行くことになった、18歳のすずとすずの祖母との会話に「傘」をキーワードとした、柿木問答の一場面があります。

※ネタバレを含みます。
すずが草原でしゃがんでいる画像
<引用元:映画「この世界の片隅に」>

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映画「この世界の片隅に」の中の重要なキーワード「傘」

その前に柿問答に関してお話します。柿木問答とは、昭和初期ごろまでにあった民間の習俗で、東北から九州に至る広い範囲で行われていました。
特に新婚夫婦の初夜の間で行われていた儀式です。そして、これは藤井昭著の「日本の民俗 広島」でこのように紹介されています。
婿が嫁に向かい、「柿の木はあるか」と尋ね、嫁は「ええのがあります」と答えます。
続いて婿は「柿は、ようなるか」と尋ねるので、嫁は「いつもようなります」と答えます。
最後に婿は「これから登って、もいで食うてもよいか」と聞くので、嫁は「はい、どうぞ」と答えます。
この「柿木問答」を経て、初めて結婚初夜を迎えることができるのです。
昔は親同士が結婚を決めることが普通でした。結婚当初まで顔を知らないお互いにとって、スムーズに事をすすめるための潤滑油のような役割をしていたのかもしれませんね。
周作が取った柿をすずに渡す画像
<引用元:映画「この世界の片隅に」>

ずずと祖母の話の中の「傘」

映画が始まって14分ごろの会話
祖母「ほんでのう。向こうの家で祝言あげるじゃろ」
すず「うん」
祖母「その晩に婿さんが”傘を一本持ってきたが”言うてじゃ」
すず「え?」
祖母「ほしたら『新(にい)なのを1本持ってきました』言うんで」
「ほいで『さしてもええかいの』言われたら」
「『どうぞ』言うええか?」
すず「えっなんで?」
祖母「なんでもじゃ」
すず「うちは大人になるらしい」
すずのすんでいた地域では傘を用いています。
地域によって傘バージョンと柿バージョンがあったようです。
屋根の上でくつろぐ周作とすず
<引用元:映画「この世界の片隅に」>

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「傘問答」の一夜に込められた伏線

そして、とうとう、その初夜の「柿問答」ならぬ「傘問答」がはじまります。
周作が布団を畳に二つ並べ、すすを待ちます。
周作が「ああ、すずさん」と話しかけ、「はひ」と答えるすず。内心(来たか!)と思ったのでしょう。背中越しに身をきゅっとします。
なんともすずの思いをうまく描いた細やかなシーンです。
周作は「傘はもってきとるかいの?」との問いに、布団にひざを突き、はにかみながらも粛々と「はい…新(にい)なのを…一本」と答えます。
しかし、周作は問答通りの「傘をさしてもいいか」と答えてくれません。
その代わり「ちょいと貸してくれ」と言います。
少し拍子抜けしたすずをよそめに、周作はその傘で外に吊るしてある、干し柿を傘で引っ掛けて取り込みます。
まだ、渋みが少し残っている干し柿を二人で食べ、二人は和やかな雰囲気になります。
きっと、周作は事前に何度も心の中で練習したのでしょう。
周作はすずが緊張してくるはずだから、なんとか緊張を和らげてあげたいという思いが、伝わってくる、温かな気持ちになるシーンです。
そして、自然にお互いは結ばれて行きます。

まとめ

昭和初期までは男女の恋愛はご法度でした。
当時の結婚という概念は「男女がお互いに恋愛した結果なりうるもの」ではなく「家族の繁栄を優先し、それによってなりうる全体の幸せ」だったのです。そもそも論が違っていたのですね。
映画「この世界の片隅に」には当時の世界の片隅に生きた人たちの何気ない生活が、現代にいたるまで生き抜いてきた人々の思いを代弁して語ってくれている奥深い映画といえるでしょう。

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katasumi
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